【スタートアップ番外編】「理想の薬剤師像」を追い求め、キャリアを重ねて人材育成のリーダーに
- toso132
- 20 時間前
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株式会社NSS調剤事業部長
小林北斗(こばやし・ほくと)

地域密着型の調剤薬局での経験を経て、現在は新設された薬局の立ち上げや経営に参画し、株式会社NSSの調剤事業部長として活躍する小林北斗さん。管理薬剤師や在宅業務の最前線を歴任し、2024年の開局から2年、組織を牽引するリーダーとして邁進している。これまでの歩みで直面した壁、対人業務の本質、そしてこれからの薬局業界を担う薬学生へのメッセージを聞いた。
人見知りを克服した大学時代と、薬局薬剤師への決意
小林さんが薬剤師を目指したきっかけは、中学生時代に母親から「理科が得意なら薬剤師に」と声をかけられたことだった。しかし、大学進学を控えた高校3年生の時、「薬剤師は接客業。人見知りの自分にはやれないぞ」と大きな不安に直面する。この弱点を克服するため、大学の6年間はファミリーレストランのホールでのアルバイトに心血を注いだ。顧客たちとの会話を通じて言葉遣いやコミュニケーションを学び、人見知りを克服していった。
大学時代の実務実習も大きな転換点となった。最初の病院実習で「患者さんと話す時間を少し長く欲しい」と指導薬剤師に直訴し、入院から退院まで一貫して患者を担当する経験を得る。その後の薬局実習では、指導薬剤師の「薬局は長い目で見ないとダメよ」という言葉に視界が開けた。「患者さんの生活背景まで見て、療養生活をサポートできるのは薬局薬剤師ならでは」と確信し、大手チェーンではなく、患者と一対一でじっくり向き合える中小規模の調剤薬局への入社を決める。
キャリア初期に直面した「最大の壁」と、泥臭くつかんだ信頼
入社後は着実にキャリアを積み、2年目の夏には新店の立ち上げを経験。その後、会社のM&Aに伴い、管理薬剤師(店長)として縁のなかった他店舗へ異動することになった。当時まだキャリア2年目でありながら、部下は全員が年上という状況。「自分が何かをしていないと、サボっているように見られてしまうのではないか」というプレッシャーと闘いながらのスタートだった。
この壁を乗り越えるため、小林さんは徹底的に愚直な姿勢を貫いた。「とにかく店長として頑張っている姿を背中で示そうと思い、誰よりも早く出勤し、誰よりも遅く帰るという生活を1年ほど続けました」
泥臭く行動で示し続けることで周囲からの真の信頼を勝ち得た小林さんは、その後、施設6軒、個人在宅約80軒という膨大な在宅業務を主導。多職種連携の最前線で圧倒的な実績を積み上げていった。
中小薬局の課題を解決する「研修事業」への挑戦

2024年に大学の同期(現代表)と共に「あさつき薬局」を開局した小林さんは、現在、自社・他社の新卒薬剤師を対象とした研修事業の責任者としても手腕を発揮している。「大手と違い、中小規模の薬局は新卒を採用しても、1年間の教育プログラムを自社で組むのが難しい」という業界共通の課題に着目し、同社の強みを生かした外部向けの研修パッケージとして展開しているのだ。

小林さん自身、前職時代に「勉強が大好きな上司」からマンツーマンで指導を受け、1年目から研修のサポートに入っていた経験が、現在の指導のルーツになっている。
研修は単発ではなく、1年をかけて月1〜2回のペースでじっくり実施される。市販のテキストをベースにしながらも、小林さんの研修では「教科書には載っていない実践的な予備知識」をプラスして伝えることで、生きた知識のインプットを促している。カリキュラムは4月の「調剤報酬の基礎」から始まり、5月からは「薬歴の書き方(SOAP形式)」、そして循環器、糖尿病、感染症といった主要な疾患を月替わりで網羅していく。
指導において小林さんが最も重視しているのは、単なる薬の暗記ではなく、生涯のベースとなる「思考法」の構築だ。
「1年目の若手は吸収力が非常に高いため、最初に一つの分野に偏るのではなく、まずは医療全体を『広く浅く』俯瞰させることを大切にしています。また、薬剤師は分からないことがあると『添付文書』ばかりを見がちですが、医師と同じ視点を持って医療を提供するためには、各種疾患の『ガイドライン(治療指針)』を読み解くことが必須です。研修では意識的にガイドラインを引く習慣をつけさせています」
多くの若手を見てきた小林さんが語る「伸びる若手」とは、周囲の目を気にせず、自身の成長のために素直に質問ができる子だという。「同期がいる環境でも、変なプライドを捨てて『こんなこと聞いていいのかな』と思うような基礎的な質問をぶつけてこられる子は、成長が圧倒的に早いです。そうした若手が、将来的に薬局の古いルールに『新しい風』を吹かせてくれると期待しています。1年目に学んだベースは一生残るからこそ、強い責任感を持って指導しています」
薬学生へのメッセージ
最後に、これからの業界を担う薬学生に向けて熱いメッセージをくれた。「学生のうちに『理想の薬剤師像』をしっかりと描いておいてほしい。現場に出ればギャップや理想との差に直面するのは当然ですが、なぜ目指した姿にたどり着けないのか、その要因を純粋に分析できるのは社会人1年目の特権です。その理想の軸がないと、勤め先や会社の選び方自体がブレてしまいます」
さらに、学校の勉強以外にも接客業のアルバイトを経験することを勧める。「忙しい時の優先順位の付け方やイレギュラーへの対応力、どんな状況でもブレない心の余裕は、一朝一夕ではいかず、長い期間をかけないと身につかないものです」
自身が思い描いた理想を、今や指導者として体現している小林さんの言葉は、未来の薬剤師たちへの確かな道標となるはずだ。




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