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薬学教育の新局面


2026年2月16日に「第25回 新薬剤師養成問題懇談会」が開催された。同会議の資料に基づき、現在の薬学教育と薬剤師を取り巻く重要な動向について紹介する。


1.臨床実践能力の更なる向上を目指す「薬学実践実習」の導入

薬剤師としての臨床実践能力をより一層高めるため、実習制度に新たな枠組みが導入されようとしている。2023年12月に発出された「臨床における実務実習に関するガイドライン」に基づき、従来の22週間にわたる実務実習を完遂した後、学生の希望や各大学の教育資源に応じて、追加で8週間程度の「薬学実践実習」を選択で実施する仕組みの構築が進められている。

この実習は、病院や薬局といった医療現場での高度な学修だけでなく、医薬品企業や行政、あるいは海外研修など、薬剤師の多様な進路を見据えた実践的な能力を養うことを目的としている。実施にあたっては、病院薬剤師側から地域連携を学ぶ場としての期待が寄せられる一方で、実習費用の負担のあり方や、受け入れ側の体制整備、指導薬剤師を養成するためのワークショップの充実など、円滑な推進に向けた具体的な課題解決が現在進行形で議論されている。


2.薬学教育の質保証と定員抑制に向けた制度改革

社会ニーズの変化に伴い、薬学教育の「量」から「質」への転換が急務となっている。2025年度時点で国内の薬学部数は81学部に達し、薬剤師数も32.9万人を超えている。しかし、将来的な薬剤師の供給過剰予測(厚生労働省の需給推計など)を受け、今後は需給バランスを考慮して薬学部の新設や定員増を抑制する方針が、文部科学省の設置認可基準の改正等を通じてすでに制度化されている。

特に懸念されているのが、学生の学力動向である。薬学共用試験(CBT)の受験者数は2016年度をピークに減少傾向にあり、これは入学後に共用試験を受ける4年次まで到達できない学生が増えていることを示唆している。また、CBTの全国平均点はここ5年で約2点低下しており、基準点を大幅に下回る層が増えているというデータも報告された。こうした背景から、標準修業年限内での国家試験合格率や定員充足率が著しく低い大学への対応が、制度上の大きな焦点となっている。


3.成果重視へとシフトする薬学教育評価と質の向上

薬学教育の質を維持するための評価体制は、単なる知識の伝達から、教育成果(アウトカム)を重視する方向へ大きく舵を切っている。

2022年度改訂の「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」では、臨床スキルの習得とともに「科学的探究心」の育成が強く打ち出された。これは、薬剤師が日進月歩の医療現場において、自らエビデンスを評価し、最適な薬物治療を提案できる能力を重視しているためである。教育評価の主眼も、学生が知識を暗記したかではなく、臨床現場で主体的に考え行動できる資質を備えたかという点に移っている。

また、大学評価においては、国家試験合格率という表面的な数字だけでなく、中途退学率や留年率を含めた「教育のプロセス」が厳しく問われるようになっている。定員割れが続く大学に対しては、文部科学省や関係団体から教育環境の維持に関する厳しい意見が出されており、質の伴わない教育機関への是正措置が検討されている。同時に、実務実習を支える指導薬剤師の資質向上も図られており、養成ワークショップの内容刷新を通じて、現場の教育機能を強化し、次世代を担う質の高い薬剤師の安定的な輩出を目指している。

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