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日本の創薬に「エンジン」を。産官連携の新機軸「AND-E(あんでぃ)」が導く革新的新薬への道

左から、上野裕明氏(AMED理事長特任補佐・参事役)、中釜斉氏(AMED理事長)、宮柱明日香氏(日本製薬工業協会会長)、木下賢志氏(日本製薬工業協会理事長)
左から、上野裕明氏(AMED理事長特任補佐・参事役)、中釜斉氏(AMED理事長)、宮柱明日香氏(日本製薬工業協会会長)、木下賢志氏(日本製薬工業協会理事長)

2026年1月19日、日本の創薬の未来を左右する大きな一歩が記された。日本医療研究開発機構(AMED)本部で開催された、日本製薬工業協会(製薬協)との共同記者説明会だ。

そこで発表されたのは、産官の知見を融合させ、アカデミアの「原石」を革新的新薬へと磨き上げる新プロジェクト、その名も「AND-E(あんでぃ)」である。


克服すべき「魔の川」:分断されたバリューチェーン

日本の創薬シーンにおいて、長年の課題となっているのが「魔の川」だ。これは、大学などのアカデミアが生み出した優れた基礎研究(発見・発明)が、実際の薬の開発へと繋がらない深い溝を指す。

AMED理事長の中釜斉氏は、この現状に対し「AMEDの研究開発支援において、各省庁に紐づく施策・事業の間に壁が存在するという指摘を真摯に受け止める必要がある」と断言した。これまでは各省庁の「縦割り」により、基礎研究から臨床試験へと至る「バリューチェーン」が寸断されていたのである。

従来、AMEDは主に「基礎研究」に予算を出し、企業は「臨床試験」以降を担うという役割分担が一般的だった。この間を繋ぐ「目利き」や「磨き上げ」の機能が不在だったことが、多くの優れた研究を「魔の川」に沈ませる要因となっていた。


「外部サポート」から「真の共創」へ:質を変える連携

これまでも、製薬協はAMEDの活動に対して人的・知的なサポートを行ってきた。具体的には、研究課題の採択審査や評価への企業の専門家派遣、アカデミアのシーズ(種)に対する実用化観点からのアドバイザー派遣、あるいは特定の研究テーマにおける官民共同コンソーシアムへの参画といった関わりが主軸であり、これらの連携はあくまで「外部からの限定的な支援」に留まっていた。

対して「AND-E」では、製薬企業のプロフェッショナルがAMEDに「出向」という形で深く入り込む。製薬協会長の宮柱明日香氏は、これを従来の協力レベルを超えた「真の共創(Co-creation)」と表現する。産業界の「出口(実用化)」のノウハウを、AMEDが支援する「原石」に掛け合わせ、実用化を劇的に加速させる狙いだ。


新型コロナワクチンの教訓:複眼的な「出口目線」

AMED理事長特任補佐に就任した上野裕明氏は、「単独の発明、発見だけでは、本当に革新的な新薬につなぐことがますます難しくなっている」と警鐘を鳴らす。

上野氏は新型コロナのmRNAワクチンを例に挙げ、「不安定なmRNAをいかに持続させ、標的細胞に届けるか。複数の発明が組み合わさって初めて、世界的な実用化に至った」と指摘した。一つの優れた発見を薬にするには、標的、モダリティ、適応症を「出口」から逆算して組み合わせる企業的な視点が不可欠だ。これまでの「点」のサポートでは届かなかったこの「出口目線」を、企業人が内部から直接注入することで、日本の創薬を抜本的に変えていく。


司令塔・上野裕明氏への期待

プロジェクトの舵取りを担う上野氏は、田辺三菱製薬の代表や製薬協の会長を歴任した、経営と現場の両方を知る人物だ。上野氏の抜擢は、日本を「創薬の地」へと再生させるための切り札といえる。宮柱会長は、「2025年度は日本の創薬エコシステム元年。今こそ真の共創により、実用化を加速させる好機だ」と、強い決意を語った。


二段階で進む活動計画

今後の活動は以下のに段階で進められる。第一段階として、企業経験人材が企業的視点でAMEDの膨大な課題を見渡し、「創薬につながりそうな課題」を選定してバリューチェーンの基盤を作る。続く第二段階では、選出した課題を起点に具体的な創薬研究計画を立案・実行し、企業的なスピード感で「薬」の形へと近づけていく。


今回の取り組みが「魔の川」を飛び越え、革新的な新薬を一日も早く患者のもとへ届ける原動力となることに期待したい。

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