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薬剤師の自己注射薬指導を支援する資料の開発と評価:北里大学の江渡恵里奈グレースさんが日本社会薬学会で発表

23 時間前
読了時間: 3分

江渡さん
江渡さん

近年、バイオ医薬品や自己注射薬の対象となる薬剤が急増している。しかし、薬局における処方箋の取り扱い経験や関連資材の整備状況にはバラつきがあり、薬剤師が基本的な手技指導を行う一方で、患者からは手技・保管・廃棄といった具体的な質問が多く寄せられているのが現状である。こうした背景から、北里大学薬学部地域医療薬学らの研究グループは、日本社会薬学会第44年会において、薬剤師の調剤・処方監査・服薬指導を支援する資料の作成とその有用性についての研究を発表した。この日本社会薬学会第44年会の場において、実際にポスター発表を務めたのは、北里大学薬学部6年の江渡恵里奈グレースさんである。  

研究のモデル薬剤として選定された「テリボン®皮下注28.2μgオートインジェクター」は、骨粗鬆症治療などに用いられるテリパラチド製剤の自己注射薬であり、ヒヤリハット事例収集事業において処方本数ミスに関する報告が多い薬剤である。テリパラチドを含む製剤は数種類あり、箱に入っている本数や投与する回数、頻度が製剤によって異なるという特徴があり、誤投与を防ぐための慎重な管理が求められる。現場での適正使用と業務支援を目指し、調剤時の処方監査に活用する資料や、患者への服薬指導やモニタリングに活用する資料といった3種類の補助資料が開発された。特に患者への服薬指導やモニタリングに活用する資料には、皮膚をつまむ、ボタンを押すといった具体的な手技や、コンプライアンス、飲み忘れ時の対応、保管・廃棄・持ち運び方法、副作用など、患者から質問されやすい内容が反映されている。  

アンケート調査では、薬局薬剤師を対象に窓口での対応を想定したシナリオ形式の問題が用いられた。分析にあたっては、インスリン製剤などのように日常的に取り扱われることが多い糖尿病治療薬に対し、薬局での取り扱い経験にバラつきがあるとされる「非DM処方箋(糖尿病治療薬以外の自己注射薬の処方箋)」の受付経験の有無などが着目された。資料の閲覧前後における正答率の変化および回答への自信が統計学的に分析された。  

その結果、資料閲覧後にはシナリオ問題の正答率と回答者の自信スコアが有意に上昇した。非DM処方箋の受付経験がある群ではもともとの正答率が高めであったが、経験の有無にかかわらず資料閲覧によって新たな知識の補足や既存知識の整理が進んだ。今後は他の自己注射薬についても同様の資料を拡充していきたいという。  

5年生の秋から冬にかけての実習と研究の両立に苦労しつつも、「自分で考えて形にする過程が好き」という理由から今回の学会発表に挑戦した江渡さん。アンケートの作成にあたっては、指導教員と綿密に話し合いながらさまざまな論文を読み込んで学びを深めるなど、これまでに経験のないプロセスに苦労しながらも真摯に向き合った。  

卒業後は病院薬剤師として就業予定であり、現場での臨床経験を積んだうえで、「いずれ自分の極めたい分野を見つけたら研究することも選択肢として考えています」と、将来的な研究への挑戦も視野に入れている。学生のうちから臨床現場の課題や患者背景に目を向け、主体的に研究を形にして学会発表を成し遂げた今回の挑戦は、これからの臨床現場に立つ若手薬剤師にとって大きな一歩となりそうだ。 

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