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薬学から世界へ羽ばたく創薬研究者:城西大学大学院・幸村友菜さんの挑戦

5 時間前
読了時間: 6分

薬学部の学びをいかに自分のキャリアへつなげ、進路のヒントを探している薬学生に向け、城西大学大学院薬学研究科の博士課程4年に在籍する幸村友菜さんの歩みを紹介する。学部生から博士課程への進学、研究とアルバイトを両立する大学院生活、「トビタテ!留学JAPAN」への応募エピソード、ロンドン大学(UCL)への留学、そしてアメリカでのポスドク(博士研究員)挑戦へと続く道のりは、将来の選択肢を広げる大きなインスピレーションとなるはずだ。

  

卒業研究をきっかけに見いだした博士課程への道

もともと「がん」という疾患に興味があり、専門的な知識と将来につながる資格の両方を取得できるという理由で薬学部へ入学した幸村さん。当初は病院薬剤師を志望していたが、転機となったのは5年次に本格化した卒業研究だった。 自分で仮説を立てて実験を行い、結果が見えてくるプロセスに魅力を感じ、「もう少し研究を続けてみたい」と博士課程への進学を決意する。薬剤師としての専門性と、博士号を持つ研究者としての高度な能力の両方を身につけておけば、将来の選択肢を大きく広げられると考えたからだ。  


研究とアルバイトを両立する大学院生活

大学院での生活は、週6日で研究室に通いながら、週3回は薬局で薬剤師としてのアルバイトに励む日々を送っている。研究では、目的とする化合物の合成がうまくいかない時期もあったが「この方法が駄目なら次を試そう」と粘り強く試行錯誤を重ねて乗り越えてきた。こうした日々の積み重ねが、自身の研究者としての強みである「粘り強さ」を育んでいる。 また、学費や生活面のサポートとして、大学院生になってから日本学生支援機構の無利子の奨学金を借りているほか、今年の12月までの業績で学校の基準を満たして推薦されれば、半額または全額の返還が免除される制度を活用している。  


副作用を抑える「二段階DDS」の構築

現在取り組んでいる研究のテーマは、抗がん剤をがん細胞に選択的に届ける「DDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)」の開発である。抗がん剤が持つ強い作用が正常な細胞まで攻撃してしまう課題に対し、以下の「二段階」の安全装置を設計している。  

  • がん細胞の表面に多く存在するCD44分子を目印にして薬を届ける。  

  • 細胞内に取り込まれた後、がん細胞内に多く存在するグルタチオンに反応して抗がん剤が作用する。  

この技術により、抗がん剤の治療効果を維持しつつ正常組織への影響を抑え、副作用の少ないがん治療の実現を目指している。

また、こうした研究成果で日本薬剤学会第41年会の学生主催シンポジウムで「SNPEE奨励賞」を受賞した。正確な審査理由は分からないとしつつも、発表の場では専門分野以外の人にも研究の意義が伝わるよう細心の注意を払った。単に新しい物質の合成結果を並べるのではなく「現在のがん治療にどのような課題があるのか」「それを解決するために、なぜこの分子を設計したのか」「実際にどのような結果が得られたのか」という一つのストーリーとして構成し、分かりやすく伝えることを強く意識したという。  


「トビタテ!」への応募とロンドン大学(UCL)での4カ月

イギリスでは現地の薬局も訪問
イギリスでは現地の薬局も訪問

幸村さんが文部科学省の留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」の存在を知ったのは、指導教員からの紹介だった。さらに、指導教員の同期である城西大学の別研究室の先生が1期生として採択されていたという縁もあり、このプログラムを強く意識するようになる。

もともと学生のうちに海外で学びたいという強い思いがあり、英語が全く話せない状態だったものの、万が一不採用であっても自力で1カ月程度留学できるよう、薬剤師のアルバイトでお金を貯めて準備を進めていた。

もともとはアメリカへの研究留学を予定していたが、ビザの関係でイギリスに変更。自身の薬剤師免許も生かし、イギリスの薬局を訪問して薬剤師にインタビューを行い、日本との違いをまとめる計画を立案した。語学力だけではなく、自ら描き出す留学計画や人物本位のプレゼンが評価されるこの制度のもと、見事に採択を勝ち取る。

こうして臨んだロンドン大学(UCL)での4カ月間は、言語の壁や日本とは異なる手続き・研究の進め方に直面し、日本での3〜4倍ほどのエネルギーを消耗する苦労の連続だった。一方で、多様なバックグラウンドを持つ海外の研究者たちと日常を共にし、日本国内の常識にとどまらない広い視野を獲得する。この経験は、「もっと長期間、海外の環境で研究してみたい」という幸村さんの新たな意欲を強く後押しする大きな契機となった。


ロンドン大学の指導教員と研究メンバー
ロンドン大学の指導教員と研究メンバー

  

アメリカでのポスドク挑戦へ

博士課程修了後は、アメリカ・ニューヨークの医科大学で、給与を受け取りながら研究に専念するポスドク(博士研究員)として勤務する予定である。海外でポスドクとして働く選択をした背景には、日本と比べて給料が良い点だけでなく、研究の技術だけでなくその国の文化や語学力など「一石三鳥」とも言える得難い経験ができると考えたからだ。

アメリカでの受け入れ先が決まったのは、学会メールで届いたアメリカの大学からの募集・公募がきっかけだった。幸村さんが取り組んでいるDDSの技術や専門性がちょうど相手側の求める即戦力と合致しており、さらに大学院時代に質の高いジャーナルへ筆頭論文が掲載されていたことや、自分の研究成果を評価してもらったことで面談が進んだ。相手の先生から「まさにこういうのがやりたかったんだよね」と声をかけてもらい、「ここしかない」と即座に連絡を取ってアメリカ行きが決定した。

今後はこれまでのDDSや薬学の知見に、がん研究やChemical Biologyを融合させた領域へと専門性をさらに広げていく。将来的には、薬剤師としての臨床的な視点と高度な研究者としての知見を生かし、新しい治療法につながる創薬研究に取り組むことが目標である。自らが関わった技術や医薬品を実際の医療へと届け、患者の治療の選択肢を増やすため、地道な挑戦を続けている。  


一歩踏み出すことで、想像していなかった未来が開ける

最初から明確なゴールや海外留学への道筋が決まっていたわけではないという幸村さん。卒業研究が面白そうだからと博士課程に進み、一歩ずつ挑戦を重ねる中で新しい選択肢が見えてきたと振り返る。  

「語学力などを理由に最初から可能性を狭めず、少しでも興味を持ったことにはまず飛び込んでみてほしい。『トビタテ!留学JAPAN』についても、まだ制度や募集が続いているうちに、後輩たちにぜひ積極的に挑戦してほしいと思います。最初から明確なゴールが決まっていなくても、興味を持ったことに一つずつ挑戦していくことで、自分が本当にやりたいことや、思ってもいなかった新しい選択肢が見えてくるはずです」



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