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薬剤師100人カイギついに完結 薬剤師の未来に繋がるメッセージが込められた最終回

12 分前
読了時間: 10分
薬剤師100人カイギ

8月22日、薬剤師がそれぞれ自身のキャリアを語るトークイベント「薬剤師100人カイギ」が最終回を迎えた。「100人カイギ」とは様々な地域、業種などコミュニティごとに生き方や仕事ぶりを語る場で、演者が100名に達したら解散するというルールとなっている。薬剤師100人カイギも1回につき5人が登壇する形式で2023年の5月にスタートしてからほぼ隔月ペースで開催され、この日、ついに100人目に到達した。ハイブリッドで開催された今回は配信会場となった川崎市のUvance Innovation Studioにも有終の美を見届けようとするオーディエンスが見守る中、薬学生から国会議員まで多彩な5名によるプレゼンテーションが行われた。イベントを当初からスポンサーとして支えてきたファルメディコ株式会社、株式会社スパーテルの代表も駆け付けた。



小林碧悧さん

新しい治療を患者さんに届く形に設計する人/臨床開発支援コーディネーター ~新しい治療を患者さんに届く形に設計する人~


小林碧悧
医薬品開発のプロセスとそこに横たわる課題についても分かりやすく解説してくれた。

立場の違いとジレンマ:フリーランスという働き方の選択


小林碧悧さんは、製薬企業やCRO、再生医療ベンチャーなどでの20年以上にわたる臨床開発の経験を通し、薬の開発について目指すゴールは同じでも、立場や組織によって重要視する点や優先順位にズレが生じることに課題を感じていました。例えば、スピードやコストを重視するアカデミア・ベンチャー側と、法規制の中で慎重かつ確実に業務を進めたいCRO(開発業務受託機関)側との間には温度差やコミュニケーションの壁が存在していました。そうした組織の枠を超えて専門家同士を繋ぎ、優先順位や進め方を調整するコーディネーターの必要性を痛感したことから、組織に縛られずに必要な場面でプロジェクトに参加できるフリーランスという働き方を選びました。


薬が患者さんに届くまで:臨床開発の全体像とプロセス


新薬が医療現場で使われるようになるまでには、基礎研究、非臨床試験、臨床試験、そして承認申請・審査という長いプロセスを経ており、一般的に9年から17年ほどの歳月がかかります。その中で臨床試験は、患者さんの協力のもと、厚生労働省やPMDA、製薬企業、医療機関、治験審査委員会など、多様な組織や専門家が関わって進められます。また、CROやSMO(治験施設支援機関)といった専門組織も運営を支えています。このように、医薬品は多くの人々の専門的な役割やバトンリレーによって初めて患者さんのもとに届けられる仕組みとなっています。


チームを動かすコミュニケーションと今後の展望


複数の組織やプロジェクトに関わる中では、それぞれの専門家が大切にしている思いを最初に丁寧にヒアリングし、プロジェクトの優先順位を共有することが重視されています。また、専門用語をそのまま使わずに分かりやすい言葉に置き換えるといった基本的なコミュニケーションの積み重ねが、チームの雰囲気や協力体制を大きく変えるポイントとなります。小林さんは、開発のド真ん中を単独で進めるのとは異なるアプローチとして、組織の垣根を越えて人と人を繋ぐコーディネーター役を務めることで、新しい治療を患者さんに届けるための新たなバトンパスの形を体現しています。



鈴木憲子さん

ユースワーカー×薬学生/任意団体クレヨン 代表/一般社団法人日本薬学生連盟 副会長外務理事/東京都バリアフリーパートナー/北里大学体育会バスケットボール部 チームキャプテン


鈴木憲子
鈴木憲子さんはこれまでの薬剤師100人カイギの運営も務め司会としても活躍した。

薬学部進学の動機と「日本薬学生連盟」での活動


母親が薬剤師だったこともあり、高校生の頃は「特にやりたいこともないから薬学部でいいか」という動機でなんとなく薬学部に進学した、と鈴木憲子さんは語りますが、現在は様々な課外活動に積極的に挑戦しています。その一つが「薬学生に新しい価値を」をモットーとする日本薬学生連盟での活動です。ここでは副会長兼外務理事を務め、アロマを使ったワークショップや献血啓発、海外からの交換留学制度を通じた交流プログラムなどを企画・運営しています。同じ薬学生同士が出会うことで「1人ではできなかったことに友達となら一緒に挑戦できる」という場を知ってもらうことに力を入れています。


「クレヨン」の立ち上げと薬育・居場所づくり


2025年3月には任意団体「クレヨン」を立ち上げ、「きっかけや安心相談により自分らしさを発見できる社会」を目指して2つの取組みを展開しています。1つ目は、茶葉からのカフェイン抽出やクラフトコーラ作りなどを通じて楽しみながら薬学に触れられる「薬育の出張授業」であり、2つ目は中高生が「タコパをしたい」といった声を大人たちが本気で実現する「居場所づくり」です。中高生が自分の興味関心を見つけるきっかけ作りや、自分の声や1票が周囲を動かすことができる政治への関心を持つことなどを広めています。


「薬学×自分のやりたいこと」で可能性を広げる生き方


将来の進路について当初は「病院や薬局のしかない」と思い込んでいた鈴木さんですが、周囲の人から「(薬剤師であっても)なんでもやっちゃえばいい、すごいアイデンティティだよ」と言われたことをきっかけに、卒業後の進路にとらわれず薬学の専門性をどう使うかを主体的に考えるようになりました。中学生の頃に合唱コンクールの指揮者をためらって後悔した経験が行動力の源になっており、「後悔したくない」という思いから課外活動に飛び込んでいます。今後は就職活動を控える中でも、薬学という専門性を武器に、自分や誰かの可能性を広げる挑戦を続けていく強い意志を見せてくれました。



狭間研至さん

薬局3.0を実践する医師/ファルメディコ株式会社 代表取締役社長


狭間研至
「ぼく薬剤師じゃないんですけど良かったのかな」と前置きしてから講演スタート。

「薬局が変わると地域医療が変わる」という信念と挑戦


医師として31年の外科経験を持ち、大阪で薬局を11店舗経営する狭間研至さんは、「薬局が変わると地域医療が変わる」という一貫した信念のもと活動してきました。薬局を単なる「薬の払い出し窓口」の場から変革するため、これまでに数々のタブーに挑戦してきました。2006年頃から薬剤師によるバイタルサインの活用や服薬後のアセスメント・医師へのフィードバックの重要性を提唱し、法改正や制度改革を動かしてきました。また、調剤業務の一部外部委託など効率化を進め、薬剤師が本来やるべき「対人業務」の充実を目指しています。


不満や不具合をチャンスに変える行動力とフォロワーの存在


新しい取り組みを進める中では「薬剤師が人の体に触れてはいけない」「調剤は薬剤師のみが行う」といった既成概念や周囲からの反対、さらには新規店舗の撤退といった数々の失敗や壁にも直面してきました。しかし、日常の不具合や不平不満を言うのではなく、“暗いくらいというよりも進んで明かりをつけましょう”と、ビジネスチャンスや改善への原動力に変えてきました。また、こうした挑戦を続ける中で「いかがわしくあれ」(©孫正義)の精神で、タブーを恐れず標準化していくことが大切であり、自分をリーダーにしてくれたのは、面白がってついてきてくれた多くのフォロワーの存在であったと振り返っています。


医療の原点を思い出し、薬剤師の専門性を活かす


終わりに狭間氏は、仕事や教育の場において「何のために医療の道を志したのか」という原点に立ち返ることの大切さを語りました。「薬剤師だから○○できない」、と決めつけず、目の前の困っている患者を助けたいという思いを胸に、やりたいことややるべきことに積極的に取り組む姿勢が求められると言いました。薬剤師が自身の専門性を最大限に活かし、医療の真ん中に入って社会を変えていくことへの強い期待を込めました。



とかしきなおみさん

「薬剤師こそ医療の中心に!」薬剤師出身の衆議院議員/薬剤師/衆議院議員


とかしきなおみ
とかしきなおみさんはリモートでプレゼン。かりゆしウェアで登場した。

資生堂から政治家への転身と街づくりへの想い


昭和大学を卒業後、資生堂に勤務したとかしきなおみさんは、「より多くの人を効率よく幸せにする仕事は何か」を考え抜いた末に政治家を目指すことを決意しました。東京の杉並区議会議員を経て衆議院議員となり、厚生労働副大臣や政務官などを歴任してきました。杉並区の商店街活性化に取り組んだ経験から、行政の補助を待つのではなく住民自身の「やる気を引き出すこと」が街づくりにおいて最も重要であると学びました。その後、大阪の吹田・摂津市にまたがるエリアで、国立循環器病研究センターや国立健康・栄養研究所を中心とした「健康をテーマにした街づくり=健都」を手掛け、健康産業の集積地づくりを推進しています。


国会議員として取り組む社会保障制度の刷新と国際連携


超高齢社会における医療費高騰や、1回数千万円にのぼる高額な先端医療(再生医療など)の普及に対応するため、現在の社会保障制度の刷新が不可欠であると訴えています。日本が超高齢社会の最先端を走る国として、先進国各国と医療・社会保障制度を連携・共有しながら、経済安全保障上の強固な枠組みを作っていくことの重要性を指摘しています。また、薬が持つ役割は世界的にますます大きくなっており、グローバルな視点で創薬や医療の仕組みを構築していく必要があると語りました。


薬剤師の専門性を活かした「攻めの予防医療」と今後の展望


これからの薬剤師は、薬を渡すだけでなく、患者のライフスタイルや価値観に合わせた健康指導やカウンセリングを行い、健康管理を地域の医療として定着させていく役割が求められています。今年度の骨太方針にも盛り込まれた象徴的な「肥満対策」を切り口として、薬剤師が専門知識を発揮できる環境づくりや新しいツールの開発に取り組んでいます。現場の薬剤師や多様なプレイヤーが連携し、未来は自らの手で勝ち取っていくものだという、強い挑戦の姿勢を持ち続けることの大切さを訴えました。



橋本昌子さん

医療と介護で人・地域・未来を育てる女性経営者/てまりグループ代表


橋本昌子
栄えある100人目を飾った橋本昌子さんはスポンサーとしてもイベントを支えてきた。

起業の背景と「薬局×介護」による地域貢献


石川県珠洲市出身の橋本昌子さんは、病院や薬局で20年間薬剤師として勤務したのち、40代で乳がんを経験したことなどを契機に「命には限りがある、やりたいことはやろう」と決意し、2008年に薬局を起業しました。その後、高齢社会における「高齢者が安心して過ごせる場所や看取りの場」の必要性を痛感し、有料老人ホームなどの福祉事業を立ち上げました。薬局と介護事業を掛け合わせることで、認知症ケアや緩和ケア、ターミナルケアに対応し、その人らしさを尊重しながら最期まで自分らしい暮らしを継続できる地域ぐるみの支援を実現しています。


組織急拡大の壁と「ベクトル合わせ」のチームづくり


老人ホームの開設等で社員数が一気に増加した際、マニュアルの徹底不足や伝達系統の不全といった組織の壁に直面しました。これを乗り越えるため、会社の判断基準となる「てまりバリュープロジェクト」を立ち上げ、「誠実さ・思いやり・人への敬意」などの価値観を従業員全員で共有する取り組みを進めました。また、中期経営計画を策定して会社の将来像や数値目標(社員数や売上)を「見える化」し、社員の不安を解消するとともに、同じ方向に向かって進む「ベクトル合わせ」の重要性を実践し続けています。


社長の器の成長と世界を見据えた挑戦


会社は社長の器以上に大きくならないという思いから、自身の人間力を高めるため、あらゆる「頼まれ事は試され事」と捉えて積極的に引き受けてきました。現在では従業員数360名を超える規模に成長し、国内だけでなく台湾の薬局グループとの資本提携やモンゴルでの合弁会社設立、インドでの介護事業プロジェクトなど、グローバルな展開にも挑戦しています。医療・介護の本質は「その人が幸せに生きるために提供するもの」であると語り、ピンチをチャンスに変えて思い描く未来を実現し続ける大切さを訴えました。



橋本昌子さんのプレゼンをもって「薬剤師100人カイギ」は完了し、規定に基づき解散した。


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