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メルクバイオファーマが切りひらく「妊活離職」ゼロの未来。当事者・専門医・先進企業と考える仕事と不妊治療の両立



2026年6月30日、メルクバイオファーマ株式会社は「仕事と不妊治療の両立プロジェクト」のキックオフイベントを「THE GRAND GINZA GALLERY」およびオンライン配信にて開催した。会場とオンラインを合わせて約120人が参加し、企業の人事・DE&I担当者や医療関係者など、多方面から熱い関心が寄せられた。

不妊治療経験者の約4人に1人が治療の断念や離職、雇用形態の変更といった「両立の壁」に直面しているとされる※1。さらに、経済産業省の試算では、不妊治療に伴う離職やパフォーマンス低下による経済損失は年間約3,000億円にのぼる※2。

同イベントでは、当事者、医療、企業の各視点からゲストを招き、不妊治療と仕事の両立を「個人の問題」から「社会で支えるべき課題」へと転換するための議論が深められた。


メルクバイオファーマが描くプロジェクト始動の背景と目指す姿

冒頭では、同社ノースイーストアジア& ジャパン コミュニケーションヘッドの大楠絵里子氏が登壇し、不妊治療と仕事の両立の難しさから生じる「妊活離職」の実態に言及した。大楠氏は、これを個人だけの課題ではなく社会全体で向き合うべき問題であると指摘した。

同社は2017年より「YELLOW SPHERE PROJECT(YSP)」を通じてライフプランニングや不妊治療の理解促進に取り組んできた。今回のプロジェクト始動にあたり、「仕事か治療かの二者択一を迫ることのない“応援される職場”を日本全体に広げたい」と語り、他企業や医療従事者との協働による環境づくりの重要性を強調した。


当事者と専門医が語る両立のリアル

第1部では、フリーアナウンサーの吉田明世氏と東邦大学医学部教授の片桐由起子氏が登壇し、当事者視点と医学的視点から両立の難しさを語り合った。


周囲への相談と通院調整の難しさ

不妊治療経験者である吉田氏は、就労しながら通院スケジュールを調整する困難さや、職場での相談のしづらさについて言及した。「治療がうまくいかない場合もあるため、周囲の目を気にして当時は相談できなかった。しかし振り返ると、不妊治療のときこそ周囲に相談することが大切だった」と自身の経験を振り返った。


医療視点でのアドバイスとプレコンセプションケア

片桐氏は、通院の急な発生について「治療は卵胞の成熟度や予測される排卵日にあわせて組まれるため、突発的な通院が必要になる」と理由を説明。その上で、「治療の流れはある程度の予測が可能であるため、遠慮せずに医師へ相談し、スケジュール調整の可能性を探りながら取り組むことが負担軽減の助けになる」とアドバイスした。

また、セッション内では「プレコンセプションケア(将来の妊娠を見据えた健康管理)」に関するクイズも実施された。自分の体の状態を知り早期にリスクに気づくことで、キャリアとライフプランをトレードオフにせず主体的にコントロールしていく重要性が示された。



企業に求められる環境整備と先進企業の実践事例

第2部では、リクルートワークス研究所の萩原牧子氏、パナソニック コネクトグループの山口有希子氏、株式会社丸井グループの岡利樹氏、メルクバイオファーマの永田一彦氏の4人が登壇。労働市場の変化を踏まえ、企業に求められる支援策や運用上の課題について活発な議論が交わされた。

構造的な労働者不足が進むなか、萩原氏は多様な個の事情に対応し「選ばれる企業」となるための雇用のアップデートが必須であると指摘。制度の実効性を高めるには、誰もが利用できる制度設計、明確な評価基準、そして信頼関係の構築が重要だと述べた。

これを受け、先進企業からは現場での具体的な実践事例が共有された。


丸井グループ:従業員の「フロー」状態を支える環境づくり

丸井グループの岡氏は、社員が自分の能力を発揮して仕事に没頭し、幸福感を得られる「フロー状態」の実現に向けた取り組みとして不妊治療支援を紹介した。社内調査では「性別特有の健康課題を互いに助け合える環境」がある職場ほど、社員が仕事に集中できていることが判明。一人ひとりの「個」を生かす支援の重要性を強調した。実務面においては、プライバシーに配慮しつつ密なコミュニケーションを図ることで、制度を形骸化させない工夫が共有された。


パナソニック コネクトグループ:信頼と共感に基づくカルチャー醸成

パナソニック コネクトの山口氏は、多様な個性を尊重し公平な機会を提供する「DE&I」の推進が、社員の人権を守り、企業の強みにつながると強調した。具体策として、柔軟な休暇制度や研修の充実、卵子凍結の費用補助などを紹介。その上で「制度は作るだけでなく、運用に魂を込めることが大切」と述べ、根底にある信頼や共感、困ったときに助け合える社内風土の醸成こそが不可欠だと訴えた。


メルクバイオファーマ:働き続ける基盤としての徹底した制度設計

メルクバイオファーマの永田氏は「不妊治療支援は福利厚生ではなく、働き続けるための基盤」と定義。同社では「治療費用助成」「休暇取得」「疾患啓発」を3本柱として推進している。特に2026年6月からは、社員対象の生涯助成上限額を従来の315万円から100,000ユーロ(約1,800万円相当)へ大幅に引き上げた事例を紹介した。重要なのは金額そのもの以上に、社員が守秘性を確保された環境で安心して自分らしく働けることだと強調した。



未来へ向けた共創:メルクバイオファーマが目指す社会

クロージングでは、メルクバイオファーマ代表取締役のジェレミー・グロサス氏が総括を行った。グロサス氏は、企業、医療、行政、当事者の垣根を越えた協力の必要性を強調。2026年3月に発足した「社会で支える不妊治療共創会議」への参画や、情報サイト「MIRAI」を通じたサポート強化に触れ、「キャリアと不妊治療のどちらもあきめることなく、誰もが人生の歩みを進められる社会を目指したい」と力を込めた。

キャリアと不妊治療の両立は、個人の努力だけに委ねる段階を過ぎている。持続可能な組織と社会をつくるため、企業の制度設計とカルチャー醸成、そして社会全体の対話が今まさに求められている。


当日のトークセッションの模様をリアルタイムに記録したグラフィックレコーディング。当日議論された、不妊治療を取り巻く実態や、社会・企業が取り組むべき課題が分かりやすくまとめられている。
当日のトークセッションの模様をリアルタイムに記録したグラフィックレコーディング。当日議論された、不妊治療を取り巻く実態や、社会・企業が取り組むべき課題が分かりやすくまとめられている。

※1:厚生労働省「令和5年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」労働者アンケート(令和5年)

※2:経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年)

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