産学連携の懸け橋「アカデミックフォーラム」で注目を集める次世代DDS技術――エレクトロスピニング法を用いた核酸医薬含有PVAナノファイバーシートの開発
- toso132
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大学の研究機関が最先端の技術シーズを発表し、医薬品企業や再生医療企業との産学連携・共同研究の足がかりを築く「アカデミックフォーラム」。幕張メッセで開催された「第28回 インターフェックスWeek 東京/第8回 再生医療EXPO 東京」の同フォーラムにおいて、岐阜薬科大学ナノファイバー創剤学寄附講座教授の田原耕平氏が、核酸医薬の未来を切り拓く革新的なDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術を発表した。製剤化が極めて困難とされる核酸医薬に対し、ナノファイバー技術を用いたアプローチは、ブースを訪れた多くの企業担当者の関心を集めていた。
熱をかけないマイルドな固形化プロセスで、核酸の保存安定性を劇的に向上
田原氏らの研究グループがプラットフォーム構築の基盤としたのは、古くから紡績分野などで用いられてきた紡糸技術「エレクトロスピニング(電界紡糸)法」である。この技術の最大のメリットは、熱を使わない極めてマイルドな条件下で、液体原料をダイレクトに固形化(ナノファイバー化)できる点にある。
近年、mRNAやsiRNAといった核酸医薬は次世代のモダリティとして期待されているが、熱や水分に対して非常に不安定であり、分子の分解を防ぐための厳重な冷暗・冷凍管理が社会実装への大きな障壁となっていた。
本研究では、mRNAやsiRNAなどの核酸医薬をあらかじめ脂質成分と複合化させ、リポプレックスやLNP(脂質ナノ粒子)の形態とした。その後、エレクトロスピニング法を用いてPVA(ポリビニルアルコール)を基材とするナノファイバーの繊維内部に、これらの複合体を構造的に安定な状態で組み込むことに成功した。
特筆すべきは、このPVAナノファイバーシートに封入することで、核酸医薬の課題であった保存安定性が劇的に向上した点である。実験では、常温保存時であっても1カ月間にわたり核酸分子の分解が強力に抑制されることが確認されており、革新的な製剤化技術としての可能性を示している。
PVAの物性制御がもたらす「コントロール・リリース」の最適化
本研究のさらなる強みは、PVAの合成技術(架橋度、重合度、けん化度といったパラメータの制御)により、内包された薬剤の放出挙動を自在に制御(コントロール・リリース)できる点にある。
実際に、用いるPVAのグレードによって細胞内導入や遺伝子発現、さらにはノックダウン効果に有意な差が生じることが実証されている。
完全けん化PVA(難水溶性):ファイバーからのリポプレックスの放出(リリース)が低く抑えられ、持続的な局所送達に適した挙動を示す。
部分けん化PVA(易水溶性):水への溶解性が高いため、水分に触れた直後から効率的に薬剤を放出し、高い遺伝子発現へと繋がることが確認された。
このように、適応部位や目的に応じてポリマーの物性を緻密にチューニングできる点は、創剤開発において大きなアドバンテージとなる。
幅広い新剤形への応用と、産学連携による社会実装へのロードマップ
高分子ナノファイバーは、あらゆる医薬品の可能性を広げる「次世代の製剤化プラットフォーム」になり得るポテンシャルを秘めている。
本寄附講座では、同大学製剤学研究室と強固な連携体制を敷き、この「メディカルナノファイバー」を新たな剤形として確立(創剤)し、社会実装することを目標に掲げている。適用可能な剤形は、皮膚や眼、粘膜表面をターゲットとした局所送達型的外用剤(貼付剤)に留まらない。錠剤やフィルム製剤といった「経口製剤」、口腔内での吸収を狙う「舌下フィルム製剤」、さらには「吸入剤」にいたるまで、極めて幅広い展開が模索されている。
また、熱処理を行わないマイルドなプロセスであるため、医薬品分野のみならず、熱に弱く不安定な化合物を扱うケースが多い「化粧品(美容パックなど)」や「機能性食品」の分野への応用展開も視野に入れている。
この優れた研究成果の社会実装を加速させるべく、2025年6月17日には同寄附講座発の大学発ベンチャーとして「株式会社ジェノフィブリクス」が設立された。同社はナノファイバー創剤技術をコアに据え、医薬品・化粧品・食品の3分野において新規製剤および高付加価値素材の開発を急ピッチで進めている。
未来の医療の担い手
今回の展示ブースで、企業の専門家を相手に堂々と説明にあたってくれたのは、製剤学研究室の学部5年生である三宅誓さんだ。三宅さんはこの壮大なプロジェクトの一翼を担い、日々mRNA含有PVAナノファイバーの調製や評価といった研究に実務レベルで深く打ち込んでいる。
病院・薬局実務実習や、目前に迫る国家試験の準備に追われる日々を過ごしながらも、「大変ですけれど、研究は本当に楽しいです」と笑顔で語る姿が非常に印象的であった。将来は大学院への進学を予定しており、さらに自身の研究を深めていく意向だという。
こうした薬学生たちが生み出す情熱と飽くなき探究心。これこそが、高度化する未来の医療社会全体、そして次世代のヘルスケア産業の発展を力強く牽引していく確固たる原動力になるに違いない。



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