薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士 食支援は患者にとっておいしいという選択が実行されることがある
- toso132
- 5月8日
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札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)
川口美喜子

管理栄養士が医療者として実践する食支援と栄養の意義を考えてみます。食支援は、「栄養・食事・食べる」を2つの側面の重複する領域で暮らしを守ることあります。栄養学的側面は、科学的根拠を第一に考え、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に必要な栄養を満たすことです。そして、患者の生理的・心理的ニーズを満たす精神・社会的側面を考慮することが重要となります。精神・社会的側面とは、食べる人の食習慣や食文化を満たし、心の豊かさや満足をもたらし、人間関係やコミュニケーションの形式に役立つことであり、食べる人のQOLや社会性を高めることです。その2つのアプローチが重複するナラティブにより進めることが薬局の管理栄養士には重要になります。単に疾病の治療に必要な栄養素の十分な確保だけでなく,患者の生理的・心理的ニーズを満たすことです。栄養支援は、管理栄養士の職能と洞察力、コミュニケーションによって、向き合うことになります。医療の中で「栄養管理」はやや異端なケアであり、ある意味、ミラクルです。科学的根拠に基づく栄養療法と、説明できない栄養もあり続けます。セルフケアでは、科学に基づく療法よりも、「私にとっておいしい」という選択が実行されます。
現行の教育では、薬局・ドッラクストアの管理栄養士が果たす顧客の栄養支援に必要な基礎教育のカリキュラムはありません。それぞれの企業が管理栄養士教育を進めています。今回は、北九州市を拠点に展開する調剤薬局およびドラッグストアチェーンの株式会社サンキュードラッグです。医薬品の提供に加え、栄養や健康に関する相談サービスにも積極的に取り組み、地域の健康サポートの実施が述べられています。今後、薬局の管理栄養士教育を標準化していく必要性を再認識することができます。
事例紹介
患者の健康状態をリアルタイムで把握し、患者の行動変容を促す
株式会社サンキュードラッグ 岡田圭子

医療機関に勤務する管理栄養士は、患者の身体状況や検査結果を基に栄養指導を行います。医療機関で栄養指導を行っていた私は、初めて薬局で栄養相談をした際に、こうしたデータが揃っていないことに大変驚きました。薬剤師は処方された薬の種類や量から病状を把握できますが、管理栄養士にはそのような手段がありません。そのうえ、初回面談時に患者様に検査結果や体重変化をお尋ねしても、明確な情報が得られないことが多く、ご自身が食べたものを思い出せない方も少なくありません。そこで、検査項目のどの数値を確認すべきか、またその数値がどの程度であれば食生活をどのように調整すべきかを説明しました。これにより、患者様がご自身の健康状態を意識し、次回の面談時には検査結果を持参されるようになりました。また、栄養相談の報告書を薬剤師が医療機関に提出することで、医師が患者様に検査結果を持参するよう指示し、薬局へ紹介いただくケースも増えてきました。その後、入職した現在の職場は、年間28万人が買い物や処方薬の受け取りなどに利用するドラッグストアチェーンでした。そのため、買い物「ついで」や薬の受け取り「ついで」に、気軽に食事や運動の相談ができる健康づくりの場が9店舗に設けられていました。そこでは、会員制の栄養相談や体操教室、地域住民向けの栄養講座、また、新たに供食の場の提供を開始し、健康的な食生活の知識を広める活動を行っています。栄養相談には血圧や体組成計を測定し、患者様の健康状態を定量的に把握しています。会員様によっては血液検査結果を持参していただくこともあります。
近年、重症化予防として、医療機関との連携を強化し、医療機関で行われる月1回の栄養指導と栄養指導の間に、週1回の来店を促し、30分ほどの食事支援や運動支援を実施しています。また、この取り組みではICTを活用し、患者様と同じソフトを使用することで、患者様が自宅で入力した食事や運動、体重などのデータを、管理栄養士が別の場所でいつでも確認できる環境を整えています。これにより、管理栄養士は患者様の状況をリアルタイムに把握し、チャットを通じて適切なアドバイスを提供することが可能となりました。その結果、会員様が継続的に食生活の改善を意識しやすくなり、早期に食事療法を見直し、修正することが可能となりました。さらに、会員様の承諾を得たうえで相談内容を医療機関の医師や管理栄養士にフィードバックすることで、医師から病状や治療方針の指針を示していただいたり、管理栄養士から指導内容や指示栄養量の変更を提示していただいたりすることで、会員様の詳細な情報を共有し、一貫した栄養管理を行うことができています。
また、店舗業務以外でも、特定保健指導、在宅栄養相談、介護予防・日常生活支援総合事業などの事業を、専任の管理栄養士20人ほどで実施しています。今後は生活習慣病の予防のみならず、重症化予防にも重点を置き、医療機関や行政ともさらなる連携を強化し、地域全体の健康増進に貢献していきたいと考えています。さらに、この取り組みを継続していくためには、管理栄養士のスキル向上が重要であると考えており、質の高い栄養サポートを提供できる体制を整え、地域に根ざした支援をより充実させていくことを目指しています。

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