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【スタートアップ番外編】縁がつないだ薬剤師人生――「漢方薬局 太陽堂」武田隆芳さんが仕掛ける『やくフェス』の挑戦

30 分前
読了時間: 5分

太陽堂グループ 執行役員 武田隆芳



武田さん
武田さん

薬学生から薬剤師、そして企業の人事責任者へ。一見すると華やかなキャリアを歩んできたように見える「漢方薬局 太陽堂」の武田隆芳さんの歩みは、実は予期せぬ「人との縁」と、自ら行動を起こしてきた軌跡そのものである。


異色のスタートから現場で培った「人との関わり」

武田さんの原点は意外にも純粋なものであった。高校時代はプロテニスプレイヤーを本気で目指すほどのスポーツ少年だったが、得意科目であった化学と数学を生かす道として薬学部へと進学した。

大学卒業後、恩師の紹介という一つの縁から病院薬剤師としてのキャリアを開始する。4年半にわたる病院勤務では、調剤技術のみならず社会人としての基礎を叩き込まれた。2年目からは後輩の育成を任され、人と関わり、誰かの成長をサポートする面白さに開眼。さらに、部署の垣根を超えて医師や看護師、他部門とのコミュニケーションを積極的に図る経験を積んだ。

その後、家族との約束を果たすため実家に戻り、派遣薬剤師を経て神奈川県内の調剤薬局へ入社。調剤薬局での勤務では、注力していた在宅医療に深く関わり、店舗責任者も務めた。さらに人事・教育研修部門へ抜擢されると、年間10人以上の新卒採用を成功させるなど、現場と本社の双方で確固たる実績を残していった。


「太陽堂」との出会いと、本音で向き合う人事への思い

キャリアの大きな転機となったのは、前職での葛藤のさなかに訪れた、大学時代の先輩との再会だった。当時、採用責任者として実績を重ねる一方で、「本当に学生のためになる採用ができているだろうか」と、自らが求める採用スタイルと会社の方向性とのギャップに悩んでいた武田さん。そんな折、「漢方薬局 太陽堂」の経営陣を務める先輩と再会し、自社の魅力や漢方にかける情熱を生き生きと語る姿に触れた。 実際に現場を訪ね、生き生きと働く社員たちや漢方薬局ならではの深い患者対応に触れる中で、武田さんの心は強く引き込まれていく。「漢方薬をもっと身近に感じてほしい」「自分が心から誇りを持てる会社で、学生と本音で向き合いたい」――前職で抱いていたモヤモヤが確信へと変わり、その強い思いに突き動かされるように太陽堂への入社を決意した。

入社後は薬科大学を自ら回り、知識の伝授にとどまらず、漢方薬の素晴らしさと薬剤師という職業の幅広い可能性を学生たちに伝え続けている。


太陽堂の待合室
太陽堂の待合室

学生と企業をフラットにつなぐ「やくフェス」の誕生

武田さんのキャリアを象徴するもう一つの取り組みが、責任者を務めるイベント「やくフェス」である。

きっかけは、太陽堂のインターン生たちとの雑談だった。「もっとラフな雰囲気で企業の話を聞ける場があればいいのに」「敷居の低い交流の場を作ろう」というアイデアから、2025年6月、わずか数社の経営者と学生が集まるカジュアルなバーベキューイベントとしてスタートした。

「やくフェス」の最大の特徴は、徹底した「学生目線」と「現場主義」にある。参加者のアンケートをもとに、開催場所をバーベキュー場から涼しいダーツバー、さらには動きやすい立食スタイルへと柔軟に改善。企業と学生が話す「1次会」だけでなく、学生同士が大学の垣根を超えて情報交換できる「2次会」を設定するなど、参加者の声を即座に反映させていった。

さらに、運営自体も学生のインターン生や有志が主体となって行う仕組みを構築。当日の司会や会場の案内、企業の紹介までを学生自身が手がけることで、参加者にとっても「自分たちのためのイベント」という温かい空気感が生まれている。

武田さんがこのイベントに込めるのは、大手優位が続く採用市場に新たな風を吹き込む挑戦だ。「大手企業だけでなく、中小企業にも尖った強みや面白い取り組みをしている会社がたくさんある。学生にはさまざまな選択肢を知ってほしいし、企業同士も横のつながりを作って情報交換ができる場にしたい」

営利目的ではなく、純粋な交流と選択肢の提示を目的とした「やくフェス」は口コミで評判を呼び、回を重ねるごとに規模を拡大。現在では100人規模の開催を目指す大人気イベントへと着実に成長を遂げている。


太陽堂の調剤室
太陽堂の調剤室

自ら動き、縁をつかむ――未来の薬剤師たちへ 

「自分の歩んできた道は、決して王道の薬剤師ルートではなかったかもしれない。しかし、振り返れば全ての場面で“人との縁”が自分を助け、可能性を広げてくれた」と武田さんは語る。

病院時代も、薬局時代も、そして太陽堂との出会いも、全ては自身が何かを感じて行動を起こした先に生まれた縁だった。「待っているだけではチャンスは巡ってこない。自分から一歩踏み出し、思いを口にすることが大切」という実感が、武田さんのエネルギーの源泉となっている。

就職活動という言葉に身構えてしまいがちな学生たちに対し、武田さんは「やくフェス」を通じて問いかけ続ける。1年生からでも気軽に立ち寄れるその場所は、未来の薬剤師たちが自分のキャリアをフラットに捉え、新しい第一歩を踏み出すための架け橋となっている。

現場の知識と人事の熱量、そして人をつなぐ情熱を兼ね備えた武田さんの挑戦は、これからも多くの薬学生と業界の未来を明るく照らしていく。


やくフェス https://yakufes.jp/


取材後記

大学時代から現在の「やくフェス」まで、一貫して感じたのは、周囲を巻き込みながら物事を前に進める武田さんの力です。これからも人との縁を大切に、薬学生に向けた取り組みをさらに広げていってほしいと思います。(NSS寺本)

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